きちんと愛せてますか?
いつだって不安になる。
俺は君の事をきちんと愛せているのか。
君は笑うかもしれないけれど、俺は君が初恋なんだ。
だから不安だ。
もしかしたら君は無理に俺に合わせてくれてるのかもしれない。
もしかしたら君は俺の事を哀れんでくれているだけなのかもしれない。
そう思うことが止められない。
好きすぎて。愛しすぎて。こんな気持ちになるのが初めてで。
可愛くほわっと笑うその表情に。
どす黒いオーラを纏い睨みつけるその眼差しの強さに。
目元を赤く染め恥かしそうに俯くその姿に。
温かく俺を包み込んでくれるその体温に。
そのすべてにただ恋焦がれるしか術がない。
「キョーコちゃん」
傍にいてくれてるのがいつか当たり前になって何もかもが新鮮味を失って君を愛せなくなる日が来て、別れを選ばなければならない刻を迎える。そんなはるか彼方のはずの未来までもが恐ろしいと思ってしまう。
どうしようもなく不安で。君が俺のことを好きでいてくれているのはわかっているけれど。
明日もまた俺を見て微笑んでくれるという確証はこの世の何処を探してもない。
もしかしたら君は明日、不甲斐ない俺に愛想を尽かし君を今度はきっと大切に大切に守ってくれるだろう君の一番の理解者である幼馴染の許へと去ってしまうかもしれない。
もしかしたら君は明日、俺よりもはるかに君の事を愛し慈しんでくれる存在を見つけてしまうかもれない。
もしかしたら君は明日、何もかもが初めての経験でうまく上手に愛すことも出来ない俺に見切りをつけてしまうかもしれない。
もしかしたら・・・。
そんな不安が胸を渦巻き、どうしようもなく怖くなる。
今までこんなこと思ったこともなかった。
彼女達に『他に好きな人ができた』と言われた時もただ冷静に仕方がない、と溜息一つで終りに出来たのに。
君からそんな言葉を聞いたら俺はきっともう二度と立ち上がることなど出来なくなってしまうだろう。
ただ君だけが、俺を幸せにし不幸にし生かし殺すことが出来る。
この世界で唯一俺の生殺与奪を握る愛しい愛しい君。
「キョーコちゃん」
どうしようもなく不安で繰り返し繰り返し名前を呼ぶことしか出来ない俺を何もかもわかってるという風に微笑みそっと優しくたおやかなその腕で抱き締めてくれる。
その温もりに触れるたびにもう二度と手放せないのだと叫びだしそうになる。
「キョーコちゃん」
俺はどうしようもなく不甲斐なくてどうすれば君の事を幸せに出来るのかもわからないけれど。
それでも誰よりも君の事を愛していると思う。
ただ愛すということに関してだけはこの世の誰にも負けないとそう誓える。
「キョーコちゃん」
もし、俺のことが嫌いになってしまったそのときはどうか俺に気付かせることなく俺の息の根を止めて欲しい。
きっと俺は微笑みながら君の腕の中で逝けるだろうから。
「キョーコちゃん」
万感の思いを込めながら、愛しい愛しい君の名を、君の腕の中で繰り返す。
ただひたすらに愛してると。
君の名前は愛の代名詞。 06.08.15