雨が激しく私の身体を打ちつける。
痛くて痛くてそして切なくて。
頬を流れる涙を雨が隠してくれた。
愚かな愚かな私の涙を。
痛みを与えるこの雨が、今の私の救いだった。


別れを告げた今でさえも私の心と体はあの人を愛していると叫んでいる。
耐えられなくて逃げ出したのは私の方なのに。
あの優しい腕を拒絶したのは私の方なのに。
それでもただあの人を求めている。



「本当に、本当に好きだったんです」




「最上さんっ!!」



後ろから掛けられた愛しい愛しい人の声。
空耳かと思ったけれど、その直後に頭の上からタオルが降ってきた。


「俺が嫌いでもいい。俺の顔が見たくないと言うなら俺はどこかに行くから。
だから、こんな雨の中外にいないでくれ」


振り向いて呆然とその声の主を見上げると、彼は苦しそうに眉をしかめ、立っていた。


「・・・」
「ん?なに?」
「・・・ど・・・て」


「どうして!!どうしてそうやって私のこと心配するんですかっ!!私は、私はあなたに別れを告げたんですよっ!?なのにっ・・・!!」


どうして、どうして。
貴方はこんなにも優しいのっ!!


「だって俺は君の事が好きだから」


一言ぽつんと言われたその言葉に私の涙はまた流れ出す。


「私だって敦賀さんのことが好きですっ!!けれど傍にはもういれないんです」
「どうして?俺のことがまだ好きだと言ってくれるなら傍にいてくれてもいいじゃないか」
「だって、だって私は・・・怖いんです。いつか、あなたを傷付けるんじゃないかって。いつかあなたに裏切られるんじゃないかって」


だから、だから・・・。



別れるしかなかった。




どうあってもどこかで読んだことのある話。