家具屋さんへ行こう!



「この部屋は好きなように使っていいから。」

そう言ってキョーコに用意された部屋は、代マネの時に1度使った事のあるゲストルーム。
でも、あの時とは違って、部屋には家具が一つもなかった。
あるのはさっき届けられた引っ越し用荷物のダンボール6箱+スーツケース1個。

「どうして何もないの?」
「家具はキョーコの好きな物を買っていいよ。壁紙も変えようか?」
「それは嬉しいんだけど、私そんなお金ないわよ。ここにあった家具でよかったのに・・・。」
「いいんだよ。俺が買うんだから。」
「えぇ!?で、でも・・・」
「俺の家に置く家具を俺が買うのは当たり前だろう?たとえ使うのが俺じゃなくても、ね。」

ニコニコと笑う蓮の笑顔はいつも以上に輝いていた。
どうやらキョーコと一緒に暮らせる事が相当嬉しいらしく、ここ何日かは始終この調子である。
そんな蓮に感化されて、キョーコも自然と柔らかい笑みになる。

「それじゃあ、どんな家具がいると思う?」
「タンスにドレッサー、勉強机、ソファかな?他に欲しいものある?」
「本棚とベッドとか?」
「ベッドはいらないよ」
「え?どうして??」
「俺と一緒に寝るんだから、この部屋にベッドなんか必要ないだろう?」

思わず顔を赤らめたキョーコを蓮は後ろから包み込んだ。
キョーコの耳元ではくすくすという蓮の笑い声が響いていた。
からかわれたと思ったキョーコは自分の肩にある頭を軽く叩いた。
叩かれた蓮は悪びれもせずに未だに面白そうに笑っていた。

「顔、にやけすぎ!」
「あはは、だって嬉しいから。キョーコは、嬉しくないの?」
「・・・・・う・・・/////もう、いいから早く家具!買いに行くんでしょう!?」
「くす、それではご希望の品を買いに行きましょうか、お嬢さん?」


「これなんかどう?」
「あ、可愛いv」

蓮の選ぶ物は全てキョーコの好みにぴったりで、キョーコがどんな部屋にしたいかも、言わなくてもわかっているようだった。
その見透かされている様な笑顔にキョーコは悔しさを覚えたが、それだけ自分の事を理解してくれているのだと思えば、自然と顔はほころんでいた。

「このくらいでもういいのか?」
「うん、充分だと思う。」
「じゃあ、会計に行こうか。」

一通り店内を見て回り、購入予定だったものも全て選び終えた二人は会計に向かう事になった。
蓮は少し強引にキョーコの手を握って、急ぎ足で移動を始めた。
それはキョーコが不審に思うには充分な行動で、まるでこの場から早く離れたいようだった。
つまり何かキョーコに見られたくないモノがあるという事だ。

「・・・・・どうしてそんなに急ぐの?誰か会いたくない人でもいた?」
「いや、別にそう言う訳じゃ・・・」
「じゃあ何なのよ?向こうに何か・・・あーーーーーーーーー!!!!」

キョーコの叫び声を聞いて、蓮は明らかにしまった、という顔をした。
キョーコは蓮の手を振り払って、嬉しそうに走っていった。

「うわぁvこんなの初めて見た!やっぱりあるんだ、こういうのーーvv」

目をキラキラ輝かせながらキョーコが見ているのは、天蓋付きの可愛らしいベッドで世に言う「お姫様ベッド」だ。
それはまさにお伽話に出てくるようなお姫様が使っていそうなベッドで、メルヘンチストなキョーコが憧れてる家具No.1である。
ようやく追いついた蓮は嫌な予感を感じつつ、キョーコに近づいた。
蓮が話しかけるより先に、キョーコは気配を感じて振り返る。
その顔は頬は上気して、上目遣い。

「これ、買ってもいい?お金なら自分で出すから!」
「・・・・・ダメ。却下。」
「ひどい!どうしてダメなの!?私の生涯の夢なのに!」
「俺は言ったよね?うちにはもうベッドがあるから、キョーコの部屋にベッドは置かないって。」
「そ、それはそうだけど・・・、で、でも!好きなように使っても構わないって言ったじゃない!」
「そうは言ったけど・・・、ほら値段見てごらん。こんなの買うお金本当にあるの?」

言われた通り、キョーコは値段を見た。
・・・・・・・・・・。

「く・・・じゃあ、ローンで・・・」
「・・・キョーコ?」
「ふえぇ〜〜〜!だって欲しいんだもんっ!!」

意外とお金にうるさい蓮が、キョーコのローン発言を見逃すわけはなかった。
八方塞がりになったキョーコの目はどんどん潤んでいった。
ダメとは言っていても、蓮はキョーコの涙に弱かった。

「・・・ハァーーーーー、・・・いいよ。買ってあげる。」
「本当に!?」
「あぁ。ただし、条件付きだけど?」
「うん!何々???何でも聞く!!」
「俺がいる時はちゃんと寝室で二人で寝る事。このベッドはあくまで俺がロケとかでいない時しか使っちゃダメだよ?それでもいい?」
「うん!!」

余程嬉しかったのであろう、キョーコは蓮に抱きついて軽くではあるがキスまでしてきたのだった。
その変わり身の速さに内心呆れつつも、これだけ喜ばれると買い甲斐があるなぁと思ったのだった。
結局2人はそのまま会計に向かい、予定していた家具+お姫様ベッドを購入した。


数日後
蓮のマンションに全ての家具が届けられた。
大まかなセッティングは部屋の主であるキョーコが行った。

「はぁ、ステキィ〜〜vv」
「気に入る部屋になった?」
「うんvvv」

満足そうに頷くキョーコを見て、蓮も満足そうに微笑んだ。
そして2人の間にはいいムードが流れ、お互いの唇が引き寄せられる様に近づいていった。
しかしそれは次の一言で見事に打ち壊される。

「ねえ、蓮?次に地方ロケがあるのはいつ?」
「・・・・キョーコ?」

せっかくのいいムードでのこの発言に蓮の不快感は一気に上昇する。
それを感じ取ったキョーコも今更ながらフォローを入れる。

「ひぃ!?う、嘘です、嘘!!ただね、こうして部屋も完成した事だし、一度くらいこのベッド使いたくて!あの、今日はここで寝ない?」
「このヒラヒラお姫様ベッドに俺も寝ろと?」
「ダメ?」

明らかに不満そうな蓮に対して、キョーコは上目遣いで対抗する。
この攻撃によって蓮の心は端から見てわかるくらいに傾いていた。

「ダメ・・・じゃないけど、このベッドじゃ、萎える。」
「・・・・あなた、そういう事しか頭にないの?」
「いや、この部屋じゃそういう気分にならないって話だよ。」
「いいじゃない、しなくて。だから今日はこのベッドに寝ましょう?」
「えぇー・・・。」
「決定〜vv」

結局最後はキョーコに押し切られる形になった。
その夜は結局2人は仲良くフリフリとレースに囲まれて、眠りに就いた。
穏やかにスヤスヤ眠るキョーコに対して、蓮はメルヘンな夢に襲われたらしく、それからはキョーコがいくら頼んでもこのベッドで 眠る事はなくなったらしい。





ナオ様から強奪してきました!!
ナオ様の20000HIT記念のフリーSSです!!
んもう、このラヴラヴな雰囲気がたまりません!!
敦賀さんってばどんな夢見たんでしょうね。
ステキしゅぎです・・・。
私も、すべての家具を買ってくれる恋人が欲しいものです。