休息
「どうなさったんですか?珍しいですね敦賀さんがこんなにお疲れになってるのなんて」
ふふふ、と笑いながら私は膝の上に頭を乗せて疲れで少し青褪めているような気がする敦賀さんの柔らかな髪をそっと撫ぜた。
さらさらと癖のない髪は優しく私の指をすり抜けていく。
その感触が心地よくて、子供のようにただその動作を繰り返す。
「どうせなら、頬を撫でてよ」
頭の位置を少し変えて私をしたから見上げる形で敦賀さんは吐息のような声をもらす。
普段大人すぎる程大人な敦賀さんが子供のように駄々をこねるのは本当に疲れている証拠。
そんなときは私に出来る限り甘やかすことにしている。
いつもは私が甘やかされているから。
敦賀さんの望むとおりに優しく、優しく頬を撫でる。
少しでも彼の疲れが癒されるように。
そっと彼の頬を行き来していた私の手が彼の手に掴まれ、気が付いたら彼は気持ち良さそうに眠っていた。
あまりに無防備なその寝顔に少し唖然としつつ、けれど彼がここまで私の傍で寛いでくれていることが嬉しかった。
「お疲れ様です、敦賀さん」
もう少ししたら日本で一番忙しい『敦賀蓮』の出番が来ちゃうんだろうけれど、どうかそれまではゆっくり休んで欲しい。
私の、私だけの恋人として。
なんとなく、マネージャーの勘でドアをノックせずそっと少しだけ開いて中の様子を伺う。
そして自分の判断の正しさを確信した。
中には天下の敦賀蓮が女性に膝枕してもらっているという衝撃的な絵があった。
けれど、最近の蓮のスケジュールが恐ろしいことになってるのは、担当マネージャーである俺が一番知っている。
恋人に逢う時間もないほど、彼は働き詰めだ。
このくらいの僅かな時間くらい、心を癒すのに使ったとしても誰も文句は言わないだろう。
音を立てないようにそっとドアを閉め、あとどのくらいの時間が残されているか計算する。
できればあともう少しだけ。