甘いKiss



甘い甘いキスをしよう。



なんて今時そんなこと言う男いるわけ?
っていうか、女の子はそんなこと言われて嬉しいわけ?
私はキスすらしたことないのにそんなこと言われても困るわっ!!


今度のドラマの台本を読みながら、苛苛する。

「キス・・・・か」

よく漫画とかで言うけど、本当にレモン味なのかな?
それともこの台本のように甘いのかな?



・・・・・。
ちょっと待って。
今誰が浮かんだ?



「もうっ!!どうしてあの人は私の頭の中にまで出てくるわけ。本当に腹立だしい人ね」
「誰のこと?」



誰からも返ってくるはずのない私の独り言に答えが返ってきたことに驚いた。
それにこの声、口調。
たった今私の頭に浮かんだ人。


「敦賀さん」

ぎぎぎぎぎぎぎっと、音がするんじゃないかと思うぐらいぎこちなく振り向いたそこには、考えたとおりの人が輝くような笑顔で立っていた。

「で?誰のことかな?」
「えっと、なんのことでしょう・・・・」


えへっと笑って見せても無駄、でしょうね。
敦賀さんの笑顔はさらに深く、眩しくなっていく。
その笑顔を見上げて、私は渋々と手に持っていた台本を差し出す。


「これです!!」
「甘い甘いキスをしよう・・・・・?」
「はいっ。キスをしたこともない私にはまったく甘いキスとやらがどんなものかも分からないんです!!
だからしようなんて言われても!!」

そう言って敦賀さんの方を向いたら、敦賀さんの顔が目の前にあって。
唇には温かくて柔らかい感触。


「どうだった?甘かった?」
「なっなっ何?今の?」
「何ってキスだよ」
「っっっっっっ!!!!!突然されてもそんな!!味とか分かるわけないじゃないですかぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!」



違うっ!!突っ込むところはそこじゃないはず。


「突然じゃなければいいんだね?」


「キスするよ」



そう言って敦賀さんは私の後頭部に手を添えて、また唇を重ねてきた。
今度は前回とは比にもならないぐらいの深い深いキス。
上唇をやさしく噛まれ、口腔内に敦賀さんの舌を受け入れ。
どうすることも出来ない私の舌はいとも簡単に絡め取られ、優しい蹂躙を受ける。
息が苦しくなってきたところで、今度は向きを変えられもう一度。
歯を舌先でなぞられて体の奥に何か今まで経験したこともない感覚が走る。
どれだけの時間が経ったのかも分からなくて、私のすべてを敦賀さんが支配していた。
敦賀さんとのキスがとても甘くて心地よいものだと感じ始めた。



「甘かったかな?」

敦賀さんは私から唇を離して、くすっと笑った。
私は何も言えなくて、ただ乱れた息を整えながら見上げていた。


「でも、ね。駄目だよ?俺以外の男と仕事以外でキスしようとしちゃ。甘いものが欲しかったらいつでもおいで?
いくらでも君にだけあげるから」



そう言って、敦賀さんは去って行った。

残された私はというと・・・・。



腰が砕けた状態で、ただ呆然と座り込んでいた。



「キスって本当に甘いんだ・・・・」










その後、敦賀蓮が気味が悪いほどに機嫌が良かったのは言うまでもない。



個人的には「!」マークが多すぎて好きになれない話。
改定しようがなかったのでそのまま更新。