愛しい・・・。



ねぇ、最上さん?
君はいつになったらその殻から出て来るんだろう。

俺はいつでも君に手を差し伸べることが出来るのに。
あいつのように傷付けないように守ることが出来るのに。
いつになったら俺の気持ちを受け容れてくれるんだろうね。


「あっ敦賀さん。おはようございます」

少し遠い所から走ってくる君。
なんて愛しいんだろう。

「おはよう、最上さん」
「おはようございます。
・・・・・あれ?社さんは?」

逢ってすぐ他の男の話とは。
仕方がないのかもしれないけれど、少しおもしろくないね。


「ふーん。俺一人じゃ不満?」

にっこり笑うと、彼女は恐る恐る俺を見上げる。
そんな上目遣いで見つめられると、理性が飛んじゃうよ?最上さん。


「いえ、そんなことは・・・・。
敦賀さんにお逢いできてよかったなー」

半泣き状態で言う彼女が余りに可愛くて、おかしくて。
我慢できずに吹き出してしまった。
こんなところは昔のままなんだね。

「今日は何か仕事なのか?」
「はいたぶん・・・。椹さんに呼ばれてるんです。
あっ、聞いて下さい、敦賀さん。
今日学校でですね-------」


くるくると表情が変わる。
笑ったり、怒ったり、泣いたり。
君は一体幾つの顔を持ってるんだろう。
そしてそれを俺には幾つ見せてくれてるんだろう。
俺はどんな時でも君の傍に居たい。


笑いながら今日あったことを話して聞かせる彼女をただ、愛しいと思った。
ただ、触れたいと思った。

気が付くと俺は彼女の頬に己の手を添えていた。
目の前の彼女は戸惑った瞳を俺に向けている。


その瞳の奥に恐怖の色がちらついているのが分かる。


まだ君はあんな男のことを想ってるのか?
早く忘れてしまえばいいのに。

この激情のままに行動できたらどれほど楽かは想像するまでもないけれど。
彼女を怖がらせるのは本意ではないから。



彼女の頬をプニっとつねった。


「なっ・・・何するんですかっ!!」
「いや、柔らかそうだなと思って」



そう言ってくすくす笑う俺を見て、彼女はそっと安心の吐息を漏らす。


今はまだ俺のこの想いを伝えることはしないけれど、それでも心の中ではいつも想っているよ。

 

君がただ、愛しいと・・・・・・。






まだ恐いかもしれないけれど、いつかきっと・・・。